なぜ人を殺してはいけないのか―新しい倫理学のために (新書y (010))

  • 作者: 小浜 逸郎
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2000/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


この衝撃的なタイトルに惹かれた訳ではありませんが、
小説以外で久しぶりにぐいぐい引き込まれてしまいました。
これだけを考えるのではなく、
人はなんのために生きるのか」「自殺は許されない行為か」「不倫は許されない行為か」「他人に迷惑をかけなければ何をやってもいいのか」等、
子どもから真面目に問われたら、
まともに答える事が出来ない問いについて考えています。

では、「なぜ人を殺してはいけないのか」という問題に立ち戻ってみよう。

これに対しての答えとして
●君は殺されたくないだろう、愛する人を殺されたら悲しむだろう、だから駄目だ。
●人を殺すと自分が壊れるからだ
などがあります。

しかし、相手が襲ってきた時には、殺されるより殺す方を選ぶものだ
ということが説明できないし、
悲しい事に人は殺した感情も歳月とともに忘れてしまうものだから、
この問いも意味をもたない、と作者は切り捨てる。

そして、聖なる歴史書である「古事記」や「聖書」が
死の記録で溢れている事にふれ、
結局、共同社会の成員が相互に共存を図るために必要なのだという
作者自身も言っている様に「平凡な」結論に達するのである。

せっかく真剣に考えたのになんだ、と
私も最初は感じていましたが、
何度か読み直しているに連れて、
やはり、こういう疑問を持つこと自体が、
本能的に人を殺す事も認めていることを示しているのだと思う様になりました。

これは奥深い問題ですが、
ふと、今話題の裁判員裁判を見ていて、
以前に読んだこの本を思い出しました。

人が人を裁くのは歴史上当然の事であり、
この世の中で、他人が法を犯した罪というものを
真剣に考える機会を与えられる可能性があるからこそ、
法の遵守をまた考えることになるではないでしょうか。

法律は共同体維持の為に必要なものであり、
倫理的な縛りがないからこそ、
常に国民に周知徹底する必要があるのでしょう!

にほんブログ村


にほんブログ村