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「悼む人」天童荒太 [読書]

「悼む人は直木賞をとった天童荒太の作品です。
これまで、惨殺のシーンが印象的な「家族狩り」だとか
孤児だった三人の友情とその過去がせつない「永遠の仔」だとか幾つか読んでいますが、
この本は赴きが違います。

今回は亡くなった人を悼んで日本中を歩く主人公と
主人公の帰りを待つ末期がんの母親、そして心がすさんだ雑誌記者の
三人の視点から書かれています。
悼む人

悼む人

  • 作者: 天童 荒太
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/11/27
  • メディア: 単行本


誰に愛され、誰を愛し、誰に感謝されましたか」と、
人々に亡くなった人のことを聞いて歩き、
悼んでいく主人公。
際限のない、旅に出て世間から全く隔離された様な生活を
歩んでいますが、最後にわずかな光も見えます。
そして、容赦なく襲いかかる各登場人物への人生の悲哀が
なんともいたたまれなくなります。
現実の世界とオーバーラップして、知らず知らずに小説に引き込まれてしまいます。

死んだら何も残らないのではなくて、
「悼む人」が悼んでくれ、心の中に覚えていてくれるということが、
安心して死に向かい合う事ができる、
また、犯罪者であっても悼んでくれる…
これらのことへの疑問はストーリー中でも悩みが見られ、
自分の中では必ずしも納得できるものではありませんでしたが、
多く語られる死について、深く考えることとなりました。

楽しく読めるものではありませんが、
死と対比することで、生に対して真っ正面から肯定できるような気がします。

ただ、主人公がしきりと話しかける
誰に愛され、誰を愛し、誰に感謝されましたか
という言葉が妙に最後まで心に響いてくる小説でした。
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